1. HOME
  2. 自然と防災の研究
  3. 富士山の特徴
  4. 地面の揺れから富士山を監視する?

富士山の特徴

富士山が私たちに教えること

富士山の特徴

地面の揺れから富士山を監視する?

本ページでは、富士山のマグマ活動を探る研究を紹介します。

この研究は、以下の共同研究によります。

  • 静岡県立大学グローバル地域センター自然災害研究部門 楠城一嘉
  • 東京大学地震研究所 行竹洋平
  • 統計数理研究所 熊澤貴雄

敬称略

 

論文など

 

富士山で起きる低周波地震とは?

富士山は1707年の宝永噴火の後、300年以上も噴火がありません。東日本大震災を引き起こした2011年の東北地方太平洋沖地震の様な巨大地震後に火山噴火が起きる可能性が高まると指摘されており、富士山の常時監視は今まで以上に重要です。

本研究では、富士山直下で起きる低周波地震に注目し常時監視の手法を開発しています(図1)。低周波地震は深部のマグマ活動との関係性も指摘されていて、地下のより丁寧な監視に活用できると考えられているからです(図2a)。

富士山周辺で24時間365日稼働する16か所の地震計で記録された揺れのデータから地震波を検知するマッチドフィルタ法(MF法)を用いました。同方法は、神奈川県温泉地学研究所が箱根山の低周波地震の観測に活用しています。

2000-2019年の期間に観測された地面の揺れのデータから、気象庁が観測した低周波地震の波形と調和する波形をデータ処理で抽出しました。雑音に混じるなどして気象庁では検知していない微小な低周波地震も拾うことができました。

処理された観測データ量は約10テラバイトと膨大で、いわゆるビックデータです。書き込みのできるDVDは約5-10ギガバイトですので、もし観測データを保存するならば、およそ1-2万枚のDVDが必要となります。

 

図1. 富士山直下で実際に観測された低周波地震。緯度、経度、深さの3次元データ。深さが0-10kmの地震を青丸で示す。同様に、深さが10-20km、20-40kmの地震を、それぞれ、緑丸、赤丸で示す。気象庁の観測した低周波地震を使用した。

 

これまで考えられていたより多く低周波地震は起こっている?

富士山直下で2003-2019年に約6,000個の低周波地震を検知し、気象庁が観測した約2,000個より上回りました(図2b)。また、地震の規模と発生回数の相関関係など、一般的な地震と同様な傾向も表れ、MF法の一定程度の精度が確かめられました。2000年頃に活発化した低周波地震の特徴が見えてくるかも研究中です。研究途上ですが、富士山の監視体制の拡充につなげたいと思います。

 

図2. (a) 富士山の低周波地震を観測するイメージ。地下のマグマ溜まり周辺で低周波地震が起き、地震動が地震計まで伝わる。記録された揺れからマグマの状態を知る研究が行われている。出典(鵜川元雄, 2007, 富士山の低周波地震, 富士火山,荒牧重雄,藤井敏嗣, 中田節也, 宮地直道編集, 山梨県環境科学研究所, 161-172, http://www.mfri.pref.yamanashi.jp/yies/fujikazan/original/P161-172.pdf)より改変。(b) 低周波地震の時間変化。左の縦軸は低周波地震の規模を表すマグニチュード(M)、右の縦軸は累積頻度。上のパネルは気象庁の観測した低周波地震に基づく。下のパネルは本研究で検知した低周波地震に基づく。

 

謝辞

  • 本研究では、気象庁一元化震源カタログ、および、気象庁、防災科学技術研究所、東京大学地震研究所、神奈川県温泉地学研究所観測点における地震波形記録を使用しました。
  • 本研究の一部は、日本学術振興会による科研費(20K05050(楠城), 21K04613(楠城), 22K03752(行竹), 20K11704(熊澤))、中部電力株式会社「原子力に係る公募研究」、文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」(楠城, 行竹)および「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-Eプロジェクト)」(JPJ010217)(楠城, 熊澤)、公益社団法人ふじのくに地域・大学コンソーシアムの「共同研究助成」(楠城, 行竹), NPO法人「富士山測候所を活用する会」(楠城)、JT「SDGs貢献プロジェクト」(楠城)、一般財団法人WNI気象文化創造センター「第12回気象文化大賞」(楠城)の支援を受けて実施しました。