富士山・伊豆半島の火山の特徴
低周波地震の発生を見る?
富士山と伊豆東部の低周波地震(解説1)を検知し、低周波地震の発生を見るグラフを公開しています。この研究は、以下の共同研究によります。
- 静岡県立大学グローバル地域センター自然災害研究部門 楠城一嘉
- 東京大学地震研究所 行竹洋平
- 統計数理研究所 熊澤貴雄
敬称略
低周波地震の発生を見るグラフ
このグラフでは、縦軸に低周波地震の規模を表すマグニチュード(解説2)を取り、横軸に時間を取ります。いつどのくらいの大きさの低周波地震が起きたかがわかります。
※グラフの説明を以下に示しています。
グラフの説明
活火山、しきい値、期間、マグニチュードの範囲を選択して「グラフ表示」をクリックするとグラフが表示されます。また、マウスでグラフの拡大縮小ができます。
- 活火山| ”富士山”または”伊豆東部”を選択
- 富士山は富士山直下で起きる低周波地震を示す
- 伊豆東部は伊豆東部火山群で現在活発な伊東沖の低周波地震を示す
- しきい値|富士山、伊豆東部でそれぞれ設定されているしきい値(解説3)を一つ選択
- 小さいしきい値を選択すると、誤検知した低周波地震を含む可能性が高い
- 富士山および伊豆東部では、しきい値CC>0.25を選択すれば、誤検知された低周波地震をほぼ除去したグラフを表示できる
- 期間|表示したい期間を選択
- 「グラフ表示」のクリック時に初期値のままでも良い
- 表示できる富士山、伊豆東部のデータの期間は、それぞれ、2003-2019年、2005-2020年
- それ以外の期間を選択すると「データがありません」という表示が出ることがある
- マグニチュード|表示したいマグニチュード(M)の範囲を選択
- 「グラフ表示」をクリック時に初期値のままでも良い
- 表示できるMの範囲はおよそ-1から2まで
- それ以外の期間を選択すると「データがありません」という表示が出ることがある
解説
- 解説1|低周波地震
- 活火山の直下では常日頃から低周波地震という通常の地震波よりも周波数の低い(周期の長い)小さな地震が起きている
- 低周波地震は深部のマグマ活動との関係性も指摘されていて火山活動の監視などに活かされている
- 活火山である富士山や伊豆東部火山群でも低周波地震が起きている
- 解説2| マグニチュード
- マグニチュード(Mで表す)は地震のエネルギーを対数スケールというものさしでで表す単位
- 例えば10の3乗(=1000)は対数で表すと3であり、10の0乗(=1)と10の-2乗は(=0.01)はそれぞれ、0と-2となる(ここでは底を10とした)
- 対数スケールを使うおかげで、東日本大震災のきっかけになったM9の東北沖地震などの大きな地震から、揺れを感じないようなMが0やマイナスの小さな地震まで一桁の値で表せる。
- 今回対象とするMは-1から高々M2までなので、低周波地震は小さな地震である
- 解説3|しきい値
- 観測された地面の揺れのデータには、ノイズに埋没して地震動と認識されていない低周波地震がある
- これをマッチドフィルタ(MF)法で抽出する
- 方法としては、各火山の周辺で過去に発生した低周波地震の中から、特徴的な波形を絞り込む
- これを雛形(テンプレート地震)としてMF法解析を実施すると、これまで「雑音」としか認識されなかったデータからテンプレート地震と類似の波形が浮かび上がる
- 検知された低周波地震には類似度(CCという指数)の低いものから高いものまであり、CCは経験的に0.1(類似度が低い)から1(テンプレート地震と同じ波形を持つ)までを取る
- 類似度の低い低周波地震をどの程度除去したグラフを示すか、しきい値を選択できる様にした
- 富士山および伊豆東部では、しきい値CC>0.25を選択すれば、誤検知された低周波地震をほぼ除去したグラフを表示できる
謝辞
- 本研究では、気象庁一元化震源カタログ、および、気象庁、防災科学技術研究所、東京大学地震研究所、神奈川県温泉地学研究所観測点における地震波形記録を使用しました。
- 本研究の一部は、日本学術振興会による科研費(20K05050(楠城), 21K04613(楠城), 22K03752(行竹), 20K11704(熊澤))、中部電力株式会社「原子力に係る公募研究」、文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」(楠城, 行竹)および「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-Eプロジェクト)」(JPJ010217)(楠城, 熊澤)、公益社団法人ふじのくに地域・大学コンソーシアムの「共同研究助成」(楠城, 行竹), NPO法人「富士山測候所を活用する会」(楠城)、JT「SDGs貢献プロジェクト」(楠城)、一般財団法人WNI気象文化創造センター「第12回気象文化大賞」(楠城)の支援を受けて実施しました。